遺産分割とは、相続の開始によって、相続人の共同所有に属している相続財産の全部又は一部を、各相続人の単独所有もしくは新たな共有関係に移行させる手続のことです。

 遺産の分割の基準は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行われます。

 遺産分割は、相続開始後いつでも行うことができます。

※相続税申告期限との関係
 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内とされており、その期間内に納税地の所轄税務署長に相続税の申告書を提出し併せて相続税の納付をしなければなりません。
 実務上は、この相続税申告期限を目安に遺産分割がなされることが多いといえますが、これは税法上の期限であって、遺産分割そのものの期限ではありません。
 相続税申告期限内に遺産分割が完了しない場合には、相続税の計算は、遺産を各相続人が法定相続分で取得したものとして未分割財産の計算を行い、各相続人の納付すべき相続税額を計算します。
 その後、遺産分割が確定した段階で、当初の申告期限に提出した申告書に記載した相続税額に増減が生じたときは、修正申告(増額の場合)または更正の請求(減額の場合)をすることにより納税額の精算を行います。

 被相続人の遺言、家庭裁判所の審判ないし調停、相続人全員の合意によって、5年を超えない期間内で、遺産分割を禁止することができます。

 

   遺産分割の対象となる遺産の範囲は、相続性を有する一切の権利義務(一身専属的な権利義務以外のもの)です。

 遺産の調査としては、不動産、動産関係、預貯金、債権、有価証券、債務といったところを調査します。

 ここでは以下の3点に絞ってご説明します。

 
 預金は、当然分割され、各相続人がその相続分に応じて権利を承継する、と考えられています。
 しかし、銀行実務では、相続人の1人がその相続分だけ払戻しを請求しても、通常これに応じません。銀行側としては、払戻請求者が真実の権利者でなかった場合に相続人間の紛争に巻き込まれるリスクがあるからです。
 そのため払戻の際には、銀行側が、相続資格の証明書類(戸籍)に加え、相続人全員による遺産分割協議書あるいは払戻同意書と各相続人の印鑑証明書の提出を求めることが一般的です。

 

 生命保険については、保険契約により発生するため相続財産には含まれないのは通常です。相続税法上は、みなし相続財産として遺産として扱われますので注意が必要です。  ただし、生命保険金の受取人が、抽象的に相続人と指定されていた場合には遺産分割協議が必要な場合もありますし、具体的な相続人と指定されていた場合には特別受益として考慮されることがあります。

 

 債務については、その相続分に応じて各共同相続人が承継するされています。相続人全員で誰がどれだけ債務を負担するか協議することは相続人の間では有効ですが、債権者に対してはその協議内容を主張できず、法定相続分どおり承継することになります。

 遺産の評価時点としては、一般的には遺産分割が現実に行われる時を基準にします。  もっとも、各財産を遺産分割時の価値に評価しなおす手間がわずらわしいため、例えば、相続税申告書に記載された評価額を基準にし、遺産分割時の評価は問題にしないということも、相続人全員の合意があれば可能です。

 

①土地の評価
 土地については、まずは相続人間で評価方法について合意を目指すことになります。
 例えば、公示価格、路線価や固定資産税評価額といった公的な価格を基準にする、等の方法が考えられます。
 不動産業者などに近隣の取引事例やその土地の収益性(賃料収入)を基準にして査定をしてもらう方法もあります。
 合意ができなければ、不動産鑑定士に遺産分割時の時価の鑑定を依頼し、その結果に従うこととなります。

 

②非上場株式の評価
 非上場株式についても、まずは相続人間で評価方法について合意を目指すことになります。
 会社の総財産に持株比率を乗じて価格を算出したり、会社の収益性や株式の配当実績を基準にする等の方法が考えられます。
 合意ができなければ、公認会計士等の専門家に鑑定を依頼し、その結果に従うこととなります。

 遺産分割の方法には、遺言による分割、協議による分割、調停による分割、審判による分割の4種類があります。

 

①遺言による分割  被相続人は、遺言で分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託することができます。

 

②協議による分割
 裁判所が関与せずに、相続人全員の合意により遺産を分割する手続で、最も一般的な分割方法といえます。
 相続人は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合を除き、いつでも協議で遺産の分割をすることができます。
 協議の成立には、相続人全員の合意が必要ですが、分割協議成立後に認知された子が現れた場合については、協議そのものをやり直す必要はなく、価額による支払請求が行われます。
 相続人全員の合意がある限り、分割の内容は相続人の自由に任されており、指定相続分あるいは法定相続分に従う必要はありません。つまり、遺言と異なる遺産分割をすることも可能です。

 分割の方法には、現存する遺産を分割することを現物分割、遺産を売却して売却金を分配するという換価分割や、過不足分を他の相続人に対する現金の支払い等で精算するという代償分割という方法があります。

 

※当事者
 遺産分割協議の当事者は、相続人全員です。
 相続人と同一の権利義務を有する包括受遺者及び相続分の譲受人、包括遺贈の場合の遺言執行者も当事者となります。
 特定受遺者は、遺言の効力発生と同時にその財産を取得するため、遺産分割協議の当事者とはなりません。
 行先不明者がいる場合には、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に対して行い、財産管理人を分割協議に参加させる必要があります。
 相続開始後認知によって相続人となった者は、既に完了した遺産分割の無効を主張することはできず、 価額による支払のみを求めることとされています(民法910条)。
 未成年者が当事者となる場合、親権者が法定代理人として、未成年者を代理します。ただ、法定代理人と未成年者との間で利益相反する場面では、法定代理人は未成年者を代理することができません。この場合、法定代理が不可能な未成年者については、家庭裁判所に対して特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
 成年後見の場合は、成年後見人が本人の代理人として遺産分割に参加します。
 保佐、補助の場合は、本人が遺産分割に参加するものの、保佐人、補助人等から遺産分割の内容について同意を取り付けることが必要です。ただし、成年後見人、保佐人、補助人らも相続資格を有する場合には、本人との間で利益相反が生じることになる場合には、成年後見人が本人を代理することはできす、別に特別代理人の選任が要求されています。保佐、補助の場合も、利益相反の場合には同様の危険が生じるため、原則として、臨時保佐人、臨時補助人の選任が要求されています。

 

③調停による分割  相続人間で遺産分割の協議が調わないとき、又は、協議をすることができないときは、各相続人は、その分割を相手方の住所地又は当事者が合意で定める地を管轄する家庭裁判所に請求することができます。

  
④審判による分割
 遺産分割の協議が調わなかったり、協議ができないときは、各相続人は家庭裁判所に対して、遺産分割の審判を請求することができます。

遺産分割の無効・取消

 遺産分割協議も契約なので、無効原因・取消原因があれば無効・取消の主張をすることは可能です。

 無効の原因としては、たとえば、①錯誤がある場合②共同相続人の一部を除外して分割協議がなされた場合などです。

 なお、遺産の一部が除外されていたり、漏れがあった場合は、分かっていたら遺産分割協議は成立しなかったといえるときは、当初の遺産分割を無効で全体に再協議する必要がありますし、分かっていても成立していたといえるときは、当初の遺産分割は有効で、後に未分割遺産のみを分割することも許される思われます。

 また、遺産分割後遺言がでてきた場合には、基本的には遺言が遺産分割協議よりも優先しますので、遺言の内容で、相続人が変更になったり、全部の遺産を遺贈していたり、その他遺言内容を知っていたらこのような遺産分割協議をしなかったといえるような場合には無効と考えてください。

 

遺産分割の取消

 遺産分割協議に際して詐欺行為や、強迫行為があれば、それらを理由に取り消すことができます。

 

遺産分割の解除

 判例上、①債務不履行による解除は認めておらず、②相続人全員の合意解除は認めています。

 ただし、合意解除及び再分割をした場合に、税務上、分割後の贈与であると認定されて贈与税が課されるおそれがあります。 

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